なみだぐも:弾き語りで表現される最高峰の切なさ
ギターだけをバックに歌われるバラード。
アルバムの中で一番「弾き語り」が好きな人にアピールするであろう、ピュアネスと切なさが溢れ出る。
佐藤瑛のかすれた声が、ヒリヒリとした痛みを倍増させる。
好きなだけで 全部全部
よくばりになってく気がするよ
全てを手に入れたいと願う。それは恋愛においては当たり前なんだけど。
彼の「冷たい手」を握ってる。
彼は私を見ていない。どこか遠くへ心は離れていってる。
この「冷たい手」というワードがこの曲のつらさの象徴ではないだろうか?
初めて触れ合った時は、暖かくて優しくて。
すべてがそこから始まるような気がしていたのに。
なみだぐも:幸せなことを、苦しいと感じる時
不安だらけの恋を隠すように
なみだぐも 素直なキモチ
輝く月を隠すかのように、心の痛みを包み込む雲。
あまりにも月が心を見透かすから、私を照らさないでと願う。
月の明かりが彼の空っぽな心を照らすから、どうか私に見せないで。
月は反射をしてるだけ。
だからこそ、冷静な明かりを放つ。
月の前では嘘は見透かされてしまう。
終わることも、発展することもない愛の姿が「なみだぐも」にはある。
佐藤瑛はそれを多くを語らずに物語を作る。
なみだぐも:イントロのギター。たった2音だけど物語を語る。
この曲の最大の魅力はイントロとアウトロに鳴る、たった二つの音だと思う。
悲しい恋の物語が開演するベル、終焉するベル。
アコースティックギターでの弾き語りというスタイルでは、勇気のいるアウトロだと思う。
映画のエンドロールまでお客さんを釘付けにする自信と冒険心がないと。
佐藤瑛は確信をもって、この2音を鳴らす。
ライブでは重要な立ち位置で歌われることが多いこの曲は
ごく初期のものらしい。
最初からこの完成度。スタンダードなラブソングに聞こえる。
いろんなディティールを散りばめて、映画のワンシーンのような「甘美な痛み」を感じさせてくれる。