ES/cape:苦しみからRUNAWAY。佐藤瑛は飛べ!と歌う。
ギターのアルペジオに歌が導き出されてくる。
今すぐここから消えてしまいたい
縛られてばかりで苦しくて耐えられない
生きていば誰もが感じる「外の世界との軋轢」。すり切れる心と体を守るために逃げ出す。エスケイプ。
自分が重ねている日々は、本当に意味があるのもなんだろうか?
自分はこの世界に必要とされているのだろうか?
自分はこの世界を必要だと思っているのか?
10代のいらだちを歌った歌はたくさんある。
自己が確立するこの時期には、自分と世界との関わりが「夢見た理想ではない」ことに気づいて、耐えられなくなる。
佐藤瑛も苛立ってる。
でも、彼女は自分に羽が生えてることを知ってる。
飛ぶのは今だと感じている。
ES/cape:繰り返すだけの毎日を飛ぶ出すために
人は心に翼を持っている。
それに気付けるかどうか。
翼を使って飛べば、より多くの夢とともに傷を負うことになる。
群れに身を潜めて、デジャヴな日々を耐えていくことの方がリスクは少ない。
でも、飛ばなければ見えない景色がある。
いつも見下ろされてばかりの人生をエスケイプするためには、傷を恐れず飛ぶことだ。
ゼロには戻れない 現状じゃ足りない
ここじゃない 見たい景色は遥か前方に待ってる
ES/cape:詩人、佐藤瑛の真骨頂
シャツに染み込んだ雨の匂いがじんわり広がる
まとわりつく日常を、これほど感覚的に捉えた歌詞があるだろうか。
あの嫌な臭いは、誰もが経験したことのあるもの。
それがエスケイプできない人の心情だ。
雨が降れば服は濡れ、その湿気はその後もまとわりつく。
じんわりと、前へ前へと進む足取りを重くする。
生きていくことが幸せに思えない日もあるよ
佐藤瑛は「飛び出せない人たち」の視点も忘れない。
空に問いかけ、答えが見つからない人たちのためにも歌う。
翼はあるよ。
今がその翼を使うときかもよ。
ES/cape:アルバム中、一番のロックサウンド
イントロのフォキーな感じから
空間を感じさせる洋楽ロックサウンドへ。
間奏でのギターの下っていくパワーコード。
ドラマティックで、聴く人を飛ばす。
たった一人で、バンドを背負う佐藤瑛を楽しめる曲。
逃げ出せ!と歌っているようで
飛び出せ!と歌っているようで
それを選ぶも選ばないも人生。
私の人生が私のものであるように、あなたの人生はあなたのものだから。
ただ、翼があることを忘れないで。