佐藤瑛「HikariSt」全曲レビュー:07【Heartin】

Heartin:軽いリズムで歌われる、変化に富んだ風景

 

深夜の1時、寝静まった10号線

 

北九州出身の僕にとって「国道10号線」は灰色の風景なんだけど
ヒールの音をコツコツとさせながら
ふわりと浮かぶくらいのウキウキ気分で飛んでく彼女。

「色気づいた私」という表現にドキリとする。
自分のことを「色気づいた私」と思う時って、どんな時?

少し恥ずかしいような、ふわふわした気持ちを、一言で言うならそうだろうけど
「色気づいたあの子」なんていう表現はあっても
「色気づいた私」というのは、なかなかないような気がする。

少し、戒めの気持ちもあるけど、抑えきれないフワフワ浮遊感を
的確に表した言葉だ。

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Heartin:高音英語コーラスと低音のセクシーさ

アルバム「Hikarist」のなかでも洋楽要素が強い印象。
クールなリズムと、ベースライン。
ワンノートで進んで行くAメロ。

突然光景は変わり

dream in dream in NOWという、オクターブ多重コーラスに導かれ
低音の不思議なフレーズ「白い鷹が先導する方へ」へとつながり、
甘く軽やかなサビへとつながる。

幕がパタンと落ちるように景色が変わる。
歌はオクターブを上に、下に。
夢遊病のような不思議な感じを残す。

 

二番に入ると、本当に霧が晴れたかのように、細かなディティールがはっきりしてくる。

 

午後4時半 くたくたなシューズ
履いてバイトに向かう

 

Heartin:彼女がたどり着きたい場所はどこだろう?

 

 

あの場所へ行けたら
真っ先に会いに行くから
その時は褒めて
上手く喋れるか分からないけど

 

何年かかっても
辿り着いてみせるから
その時は目の前で
lets sing! for you
my heart in a song

 

歌に込めて何を歌うのだろう?
あの場所とはどこなんだろう?
会いたい人(?)なだれなんだろう。

地名や時間などのリアルなパーツと、対象物をはっきりさせない曖昧さ。
この曖昧さがこの曲のベースを走ってる。

これぞ、ライブではない「レコーディング」の面白さだし、スタジオワークだと思う。
わかりやすさではなく、7曲めに空気のようなこの曲を配置することが、アルバム全体のバリエーションを、もう一枠広げることになる。